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一言居士です。これだけは聞いて欲しいと思っていることを書かせていただいております。
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全世界を巻き込んだ「リーマン・ショック」(米国のリーマンブラザーズ社が破産申請したことを筆頭とする一連の金融市場の混乱)にあっては、いろいろなことが言われているが、その中に「リーマンのような外資系証券会社はもともと超高給取りなので、こと社員に対しては、同情に値しない」といった声がある。

 そもそもサブプライムローン問題発生の背景には、金融マンの成功報酬制度に問題があるのではなかろうか。利益を獲得するために、あえてリスクを受け入れるというリスクテイクの行き過ぎが、サブプライムローン問題発生の重要な要因(たぶん根本的には最重要な)だ。なので、特に高額報酬の投資銀行マンの行動様式については、研究する必要ある。しかし研究や金融制度設計の問題を離れて、「同情するかどうか」を考えると、別の側面がある。

●フロントとバックでは報酬が大きく違う

 身近なところで、日本に進出している外資系の証券会社に勤めている人々の処遇を考えてみよう。端的に言って、日本法人の社員全員が超高給取りで高額所得者だというわけではない。外資系の金融の仕事は、大まかに言って「フロント(オフィス)」と「バック(オフィス)」に分かれる。トレーダーやセールスマンのような直接利益を稼ぐ職種がフロントであり、経理や人事・総務、システム関係(社内では「IT」と呼ぶことが多い)などフロントの仕事を支え、稼ぎに直接は関わらない仕事がバックである。

 外資系金融では、そもそも中途採用の人材が多いが、フロントとバックでは処遇の仕組みもレベルも大きく異なる。フロントでは、職種や本人の稼ぎによっては数千万円の年収が珍しくないし、近年は1億円を超す年収をもらうケースが、かつてよりも格段に増えているようだ。

 フロントの年収はベースサラリーとボーナスで構成される。ベースサラリーは固定料であり、高額所得者でもこれ自体は2000~3000万円程度であることが多い。会社契約の賃貸家賃などを差し引いた金額を12で割って、毎月支払われるのが普通だ。明らかに高額所得者に見える外資マンに年収を聞いた時に、「いや、案外たいしたことはありません。日本の企業の部長かせいぜい平の役員くらいですよ」とか「3000万には届きません」などと答えることがあれば、これはベースサラリーだと考えてよい。

 外資勤めの醍醐味は明らかにボーナスにあり、これは、本人の利益への貢献に対して、10%くらいといっためどで年に1度支払われる。個人の稼ぎの額とボーナスの関係は、会社・職種・人事評価(ボスの個人的好みも大いに影響することがある)により異なるが、大まかには比例していて、稼ぎが増えるとボーナスも増える。近年は、動くお金が大きくなっているので、ボーナスが巨額になっていると聞く。また、長年の好況下で外資間の人材獲得競争が激化したこともボーナス条件の全体的レベルを引き上げたようだ。しかし1億円以上を稼ぐプレーヤーとなると、世間が想像するほど多くはないと思う。

 そもそも、純然たるフロントのプレーヤーはそう多くない。日本法人に1300人の社員がいると報じられたリーマンでも、社員の半数以上はバックだと思う。彼らにしてみると、「どうせ高給取りなのだから、同情に値しない」と世間から言われがちなことは、かなり不本意だろう。バックの仕事の場合、大まかには日系企業の同種の仕事の5割増しから2倍くらいの年収の場合が多い。年収を単純に12で割る月給か、決まった年収を18で割って毎月支払い、夏冬に3カ月分ボーナスのように支払うというようなケースが多い。1年単位で年収が見直されることが多いが、10年以上全く昇給しなかったなどという事例も聞く。

●外資系企業の報酬は高い?

 従って、職種がフロントとバックに分かれると、同じ会社にいて、同じ大学出身で共に30歳で、片方が年収6000万円、もう片方が1200万円、というくらいの差は普通に発生する。

 問題はリスクだ。外資系の会社が日系の会社と最も違うところは、端的に言って外資は「クビになることがある会社」だという点だろう。外資のすべてがクビを切りまくるわけでもないし、日系企業でもクビはあるが、リスクと緊張感は格段に違う。

 フロントとバックでは、やはり、フロントの方がリスクが大きい。稼ぎが悪くなるとそもそも居づらくなるし、容赦なくクビになる。また、そこそこに稼いでいても、もっと期待できる人材を外から引っ張るためにクビになることもある。

 バックの場合は、本人の稼ぎが悪くてクビということはない。長く勤めている人は、明らかにバックの方が多いだろう。しかし、本社ないし日本法人のコストカットの一環として人員整理の対象になることはあるし、外資特有の撤退や縮小のリスクもある。サービスすべきフロントの相手が入れ替わって、合わなくなってクビというようなこともありうる。「日系企業の5割増しから2倍」といった報酬水準がこうしたリスクにも十分見合うかどうかは難しいところだ。

●稼げるときに稼ぐことが1番のリスク管理

 リーマンの日本法人は、今後どうなるのかはまだ流動的だが、野村ホールディングスがリーマンのアジア事業(含む日本)を買収することで合意した。全面撤退という最悪の事態ではなさそうだが、大幅な人員縮小になる可能性は大いにある。フロントのプレーヤーにはそれなりの覚悟があったかもしれないが、バックオフィスの社員たちには、いろいろな意味で同情を禁じ得ない。

 フロントを選ぶか、バックを選ぶか、また、同じフロントでもどのような仕事を選ぶかで大きな差がある。また外資系金融の日本法人というリスク要因自体が相当に大きいので、結局、リスクを怖がるよりも、稼げるときにたくさん稼いでおくのが1番のリスク管理だという感覚が正しいことが多いだろう。しかし、稼げる仕事には倫理的に疑問のあるものも少なくないので、その辺の価値判断も重要だ。いずれにせよ外資勤めでは、いつどんな職に就いているかで、天地の違いがある。もっとも、どの分野でもにわかにプロになれるわけではないから、職種(担当商品も含めて)の選択には運の介在が大きい。

 外資勤めでは最悪の場合、自力で再就職して食べていけるだけの能力と自信が必要だ。船が転覆したら、自分は岸まで自力で泳げる、というような感覚が要る。

 この点では、新卒あるいは十分なスキルがない段階で、こうした逆境にさらされると厳しい。10年と少し前に、ある欧州の銀行系証券会社が日本株部門を撤退したことがあったが、その際には(季節は秋だった)、その年に新卒で入社してたまたま株式部門に配属された青年もまとめてリストラされた。筆者は別の外資系証券会社にいて、彼の就職相談に乗ったが、新卒までクビを切るとは、いかに外資とはいえひどい会社だと思ったものだった。

 また、金融機関同士の買収や合併があると、たいていは程なくリストラがあるし(金融機関の合併は最初からリストラ益をあてにしている)、主導権を取れなかった側の社員は淘汰されることが多いし、働き心地が悪くなることが多い。

 バンク・オブ・アメリカに買収されることが決まったメリルリンチの社員の中には、「(僕は)リーマンでなくてよかった」と安堵している人がいるかもしれないが、前途は甘くないだろう。

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